「なんで〜なんで〜雨は降ってくるしクリスマス、クリスマスなんっつって〜みんな舶来かぶれしやがってよ〜」
ガシャン!
「あんた、また飲みすぎちゃって!も〜!徳利壊さないの!」
「なんで〜助さんまた飲んで暴れてんのかい、大変だね〜あんたも」
「そうなのよ〜、とめさん、なんでも、あたしと一緒になる前に婚約していた女のこと思い出したみたいなのよ、あたしの身にもなってみろってんだよ〜もう!」
「さちぃ〜!さちぃ〜!なんでオイラじゃ駄目だったんだよ〜オイラ、オイラあの日ずっとあの橋の上で待ってたんだぜ〜!い〜っつも待ち合わせてたあの橋で〜!」
「もうっ!毎年この時期になるといっつもなのよ、異国でいうクリスマスとかなんとかってやつなんでしょ、なんでも結婚の申し込みをしようとして、そう、あのひと変に格好つけるとこあんでしょ、そのクリスマスとかっていう日に結婚を申し込もうとしてったんだって、でも待っても待ってもその人はまったく現れなかったっていうんだよ、あの人のいい加減さに愛想尽きたんでしょ、まったくっ!あんたっ!もう飲まないほうがいいわよっ!」
「さちっ〜さちっ〜!」
「うるさいっ!寝ろってんだよ!もう、やんなるっ!」
「おうっ・・・そー言えばよ〜あんたの旦那があんたと一緒になる前の事なんだがよ〜、おめーの旦那の徳が昔よく酒飲むとよく言ってたんだが何でも親同士が無理に結婚させたがってる女がいたんだってよ、あいつに・・・オイラには信じられねーんだがよ・・・酒飲んで話してた事だからよ〜、でも、あいつにはその時分好いてる女がいてな、その女は自分とは身分も違うからどうにもなんねーってそん時も今夜みてーに酔っ払ってたな〜」
「誰なのその女って?」
「わかんね〜よ・・・あいつ自分の事はあんまりしゃべんねーからな、なんでも、その結婚しなきゃ〜なんない女と同じ名前らしいんだよ、呉服屋の娘だからオイラみてーなのは相手にしてくれねーんだよって言ってたな、今夜、駄目でもいいから思い切ってその女、橋の上呼んで結婚申し込むんだっていってたな、そうでないと死に切れね〜って、おっと、オイラも喋りすぎちまったな、まったく、異国でいうクリスマスって〜日だからかな、今夜は・・・」
「・・・あたし・・・とめさんには言ってなかったけど、呉服屋の娘で・・・橋の上に呼び出されて結婚を申し込まれて・・・あたし・・・前からずっと前から、あの人の事が好きで嬉しくて・・・・それが・・・」
「わかんね〜よ、なんだか今夜は喋りすぎたな〜、もう帰るわ!、じゃーな」
「もうっ!、どうなってんのよっ・・・あっ!、あんた、起きてたの・・・」
「・・・おうっ・・・実はな・・・オイラ結婚の約束をしてた女がいてよ、でも、おめーの事がどうしても好きで、ず〜〜っとおめーの事が好きで、婚約していた女との約束、反故にしておめ〜と一緒になりたくてな、おめーあの時、うなずいてくれたんだが、今、どうオイラの事思ってんのかな〜って考えたらよ〜オイラ、オイラ!やりきれなくてよ〜毎年この時期になると飲まねーとやってられね〜んだよ!」
「・・・ばかだね〜あんた・・・あたしはあんたと一緒になって本当に良かったって思ってるよ、・・・飲むとだらしが無くて、いいかげんだけどあたしの為に一生懸命働いてくれるもの、あんた・・・本当にばかだね〜・・・約束したじゃないの、あの橋の上であんたにず〜っとついてくって・・・あっ!・・・あんた・・・雪だよ・・・」
「さちっ・・・メリークリスマス!」
「・・・もうっ!あんたったら・・・」
・・・終わり
(この物語はすべてフィクションであり登場する人物は実在しません)
山下達郎 - クリスマス・イブ
object width="425" height="344">